シリーズ「お金のかからない基礎研究発表」 必要ソフトウェア編(その1)
まずは、必要なソフトウェアを紹介していこうと思う。
というか、必要ソフトウェア編こそが当シリーズの目玉でありメインコンテンツである。つまり、最初からクライマックスなのである。とりあえずここに列挙するソフトウェアがあれば、私のこれまでの業績(英文ふくむ筆頭論文・学会口頭・ポスター発表)すべてを(ほとんど)お金をかけずに再現することができる。
*開示すべき利益相反関係はありません。
1.Microsoft 365
「お金のかからない」と謳っておきながら、いきなり有料ソフトウェアである。これでは優良誤認、看板に偽りありだと思われるかもしれないが、何事にもやはり必要最低限というものがある。
タブレット端末もしくはChromebookを使っている諸氏であれば、タブレット用の無料OfficeアプリもしくはGoogleのOffce互換アプリでもなんとかなるかもしれない。またパソコン用にも、かつてのOpenOffice、今のLibreOffice(とApache OpenOffice)のようにマルチプラットフォームのオープンソースソフトウェアもあるので、本当に無料でやろうと思えば、これらも充分に使用に耐える。
ただ、普及率や自身のスキルアップという点では、メインストリームに乗るのが王道にして正道である。今でこそだいぶ解消されてきたが、Office互換アプリケーション間でのファイル互換性の問題はいまだ顕在であるし、特にプレゼンテーション作成ソフトの文字化け・レイアウト崩れは結構(精神的)ダメージが大きい*1。またExcelの関数を覚えると研究に限らずいろいろな業務に応用が効くので、ネット上にリファレンスの多いMicrosoft Officeの使用を勧めたい。メインで使うOfficeソフトはMicrosoft Officeとして、サブ機もしくは補助用途としてこれらオープンソフトウェアを併用するのが無難だと思う。
特にLibreOfficeにはLibreOffice Portableという(Windows版だけであるが)インストール不要のリムーバブルディスクから起動できる派生版がある。手持ちのUSBフラッシュドライブにデータとLibreOffice Portableを入れておけば、Windowsパソコンのある場所なら、いつでもどこでも自分で構築した環境でワープロ・表計算・プレゼンテーション作成等々ができる(=パソコンを持ち歩かなくていいし、ネット環境も必要ない)という大きな利点がある。
ポータブル版 | LibreOffice - オフィススイートのルネサンス
Multilingual_All(約250MB)とMultilingual_Standard(約190MB)があるが、日本語と英語だけで良ければStandardでよいので、楽天の買い周りポイントアップキャンペーンの時に適当な16GBのUSBフラッシュドライブを500円くらいでひとつ買い足しておけば、それで研究発表資料をいつでもどこでもできるようになるのである*2。
Officeを少しでも安く購入するなら米Microsoft Storeから!
Office購入については、学生さんならAcademic版を定価の半額ほどで購入できるし、所属機関がMicrosoftと認定機関契約をしているならOffice 365 Educationを無料で使えるので、少しでも安上がりに済ませる方法を大学生協などで相談してみると良いだろう。Academic版は商用利用不可であるが、基礎研究結果の発表だけならば問題はない。ただベンチャー企業としての業務を兼ねたり企業との共同研究の場合には、内容によっては商用利用の範疇に抵触する可能性があるので、その場合はラボのPIもしくは研究代表者に確認する必要がある。
買い切り型とサブスクリプション版は、それぞれ一長一短である。自分だけで使うならサブスクリプションはMicrosoft 365 Personal(¥12,984/年)なので、買い切り型のMicrosoft Office Home & Business 2021(実売約¥34,000)と比較すると、2年半以内に買い替えないなら買い切り型の方が割安である。ただどちらも、Amazonなどでセール価格になることもあり、365 Personalなぞは今年のAmazon Prime Dayにはなんと¥9,930/年まで値下がりしたので、うまくセールのタイミングに合えばかなりお得に使える。またさらに裏技として、実はMicrosoft 365はアメリカのMicrosoft Storeで購入したほうが値段が安いのである。
すべての Microsoft 365 プランと価格を比較 (旧 Office 365) - Microsoft Store 日本
Compare All Microsoft 365 Plans (Formerly Office 365) - Microsoft Store
円相場を考えても、米Microsoftから購入したほうがお得であろう。Officeアプリの言語設定のほとんどはMicrosoft365アカウントのプロファイル言語設定に則っているので、ダウンロードしたアプリが英語版しかない…ということにはならない。このあたり、OSにも各国語版が存在した昔から比べると、末端ユーザーとしてはありがたいことである。
また残念ながら、米Amazon, Best Buy, Target, Waltmartなどの量販店では日本のAmazonのように割引はされていなかったが、Costcoでは365 Personalが$58.99、Office Home & Businessが$219.99でそれぞれ販売していた。Costcoの会員カードは全世界共通なので、Costco会員の方はこちらから購入するのが最安値かもしれない。
Microsoft 365 Personal 12-Month Subscription (E-Delivery) | Costco
Microsoft Office Home and Business 2021 (E-Delivery) | Costco
最後に注意点を。
某フリマアプリなどでは、Office(やAdobe商品などが)インストール済という中古パソコンが多く出回っているが、その中にはいわゆる海賊版ライセンスを流用しているアカウントがまぎれているので注意が必要である。またiPadなどにOfficeインストール済みだからと値段を上げている物があるが、本来iOS用のMicrosoft 365アプリはサインインせずに無料ダウンロード版でも(一部の機能は限定されるが)ファイルの閲覧・編集・保存はできるので、こういう不埒な輩に漬け込まれることの無いよう、注意していただきたい。
*1:Microsoft OfficeでもWin←→Mac間では未だによく起きるが
*2:うまくいけばアップしたポイントで買えてしまえるかも