ひょいっと一歩、踏み出すブログ

底辺スカベンジャーM.D.研究者

去年の同じ時期に比べて出生数が上がったよ!でもね……

10月の出生数、再び増加 出生率上昇の可能性
http://www.tokyo-np.co.jp/flash/2006122101000566.html

10月の出生数は9万6853人で、昨年10月と比べて3531人増となったことが21日、厚生労働省の人口動態統計の速報値で分かった。
厚労省によると、1−10月の出生数は93万5358人で、前年同期比で2万1178人増。10月は婚姻も6万9383組と前年同月を2カ月ぶりに上回った。


この調子でいけばつい先日発表された2005年の出生率1.26から、再び1.3弱まで回復する可能性も大きい。よかったよかった……


と言いたいところだけど、上で議論されているいわゆる出生率とは、正確には「合計特殊出生率」と言い、女子が一生の間に生む子供の数を表す。具体的には出産可能年齢(15〜49歳と定義される)における「年齢別出生数の和/年齢別人口の和」という計算式になる。しかし、これはあくまでも「その年度おける数値」であり、いわば瞬間風速みたいなものだ。だからその瞬間における勢いはわかっても、結果として人口動態がどのような変化を示すのかの指標にはなりづらい*1
で、そこで登場するのが「総再生産率」と「純再生産率」という概念。これはそれぞれ、前者は出産可能年齢の女性が一生の間に生む女児の数*2、後者は総再生産率に母親の死亡率を考慮に入れたものを表す*3。そして純再生産率が1.0ならば人口は不変であるとされる。純再生産率はつまり、お母さんから娘がひとり生まれれば次世代のお母さんが確保できると言う意味であるので、長期的な人口の移り変わりのよい指標となるのだ。


ちなみに、平成16年度の総再生産率は0.63、純再生産率は0.62。
行政には、一時的な風力アップに浮かれることなく更なる高みを目指して欲しいものです。

*1:合計特殊出生率が2.1〜2.2程度なら人口維持が出来るとされる。2でないのは男児のほうが女児に比べて死亡率が高いため。

*2:人口動態に影響するのは女の子の数であり、男がいくら集まったところで子供は出来ない。

*3:なお数学的には合計特殊出生率≧総再生産率≧純再生産率という関係になる。